それはちょっとした気まぐれというか、思い付きだった。
ジン=フリークス。
ゴンの父親だというその人物は、電脳ページでめくったら極秘指定人物、と出た。
それだけで彼が只者ではないことが窺える。
そこでふと、彼もハンターだということを思い出し指が勝手にキーボードを叩いた。

尚樹=水沢

画面に表示された文字に後ろの2人が息を呑む。
出てきた名前はひとつだけ。本人のものに違いないだろう。
一瞬躊躇って、それでもクラピカはその名をクリックした。

尚樹=水沢
流星街出身
年齢、生年月日不詳(推定16歳)・男
1994年ゼタ=クリスの養子となる
第285期ハンター試験合格

「流星街…」
ほとんど情報らしい情報は載っていなかった。
流星街出身のせいか。

ゼタ=クリス

唯一情報として拾えそうな名前を打ち込む。ハンターでなければ人名リストでは出てこないだろうが、他に使えそうな情報はない。

幸運にもその名前がひとつだけ検索に引っかかった。
自分でも何故ここまで調べているのか分からなかったが、強いていうなら、何か引っかかるのだ。
彼の自分を見る目に何か含みがあるような気がする。
何か、自分に隠している。それは確信に近かった。

出てきた名前にカーソルをあててクリックする。
表示された内容は先ほどとあまり変わらないものだった。

ゼタ=クリス
パドキア共和国出身
1943.12.6生(57)・男
第251期ハンター試験合格
被災地への物資運搬等の活動が評価され1982年1ツ星ハンターに認定される

特に変わったところもない。
やはりそう簡単に個人情報は手に入らないかと画面を閉じようとしたとき、ゴンが後ろから手を伸ばして画面の一点に触れた。
「ねえ、これ…パドキア出身てことはキルアんちの近くに住んでるのかな?」
「いや…それは…否定は出来ないが可能性は低いんじゃないか? 出身であって現住所ではないし…」
「でも…」
珍しく言いよどんでゴンが難しい顔をした。
その様子にレオリオと顔を見合わせる。

「おい、ゴン。なんか気になることでもあるのか?」
レオリオが先を促すと、うーん、とうなりながらもゴンが顔を上げた。
「尚樹って…ヒソカと知り合いらしいんだけど、ギタラクル…じゃないや、キルアのお兄さんとも知り合いみたいなんだ。しかも結構仲良さそうだったし…」
ゴンの言葉に再びレオリオと顔を見合わせた。
一体、花屋の店番と暗殺者にどういう接点があるのか。
ハンターであることも、試験中に見せた身体能力も、花屋の店番には不釣合いなものだ。
「…それなら、もしかした近所なのかもしれないな」
心にもないことをクラピカは口にした。
同意を得られたせいか、ゴンは無邪気に「そうだよね」と笑顔を見せる。

もし近所に住んでいたとして、花屋の店番と暗殺者が仲良しだとは思えないし、ヒソカのような狂人と問題なくやっていけるとは思えない。
きっともっと他の理由があるはずだ、とクラピカは確信していた。