14 …酔ってる

主人公パーティーは、実は成人している人間というのがジェイドしかいない。
となると、必然的に酒を飲む人間は限られてくるわけで、ジェイドと自分、という非常にうれしくない組み合わせになるわけである。
うるうるといつもの2割増ほど熱っぽい瞳で視線を向けてくるジェイドに、リオがげんなりするのは必然と言えた。
なにげに酒に弱いよなぁ、と近づきすぎた顔をさり気なく遠ざけようと、撫でるふりをして引き離す。
その仕草が、ジェイドをさらに喜ばせている事は、もちろんリオの与り知らぬ所である。
外殻大地から吹き出した障気を中和するために、集まったレプリカと、ルークの超振動を使うという事で決着がついたのはつい先ほどの事だ。
ジェイドはもともとあまり酒を飲む方ではないから、今日は彼なりに思う所があるのだろう。
そもそも、この方法をはじめに提案したのは彼で、その役目をアッシュではなくルークにと口にしたのも彼だ。
もちろん、この役目にルークの方が適している事は、口にせずとも皆が思っていたはずで、ジェイドだけが責められるいわれはない。
それでも、口火をきった彼が非難されるのは割けられない事だった。
「いつも、損な役回りだよな」
ルークの事を結構気に入っているくせに、顔色さえ変えずに。
いつも憎まれ役をかってでている事を、ジェイドに会う前から知っていたリオは、それを近くで目の当たりにして再確認した。
表情にこそ出さないが、ジェイドが自分を責めている事は分かっていた。
以前より少し伸びた髪を撫でる。
揺れる瞳が、迷っているのか、それとも後悔しているのか、リオには分からなかった。
「ジェイドは、自分に出来る最善の事をしたと思うよ」
だから、そんなに落ち込むな、と慰めてやる事しか、リオには出来なかった。
「私の事、軽蔑しましたか?」
「……今、俺が言った事聞いてたか?」
思わず声が低くなる。どうしてこの会話の流れでそんな結論が出てくる。というか、どれだけ俺は嫌な奴なんだ。
「でも」
「あんたに言わせたのはピオニー陛下だろ? それに、誰かが言わなくちゃいけなかったんだ」
ジェイドが僅かにまぶたを伏せる。震えるまつげに、あ、泣くかも、と少し上からそれを眺めた。
ひどく儚げなその表情は、いつも見るものとはまた違って。
ああ、関わりたくないのになぁ、というリオの心を少しだけ動かした。