13 虹をまってる
「なぁ、以前から思ってたんだけど、おまえって軍人のわりに……」
ティアより肌白くないか、と言おうとして我にかえった。なんだこの着眼点、我ながら気持ち悪い。
いや、でもやっぱ白いだろ、とその頬に視線をおとす。
肌色って言うより、白。譜眼だとしらなければアルビノかと思ってしまうくらいだ。
「ラドクリフ?」
「いや、何でもない、忘れてくれ」
下から覗き込むな、とその視線を遮るように頭に手を置く。
こんなことに気をとられるなんて、今までにないくらいジェイドと一緒にいるからだ、と内心で悪態をつく。
死ぬって分かってるのに、何でいまだに主人公パーティーと一緒にいるんだ、自分。
答え、ジェイドの子犬攻撃に耐えきれなかったから。
つーかなんで軍の上層部もいってこい、みたいな雰囲気になってるんだ。おかしいだろ。あきらかに面倒事をおしつけただろう。特にピオニー陛下。あんたはあきらかに顔がにやついてたから! なんか良からぬ事を企んでるのが顔にばりばり出てたから!
もうどうにでもしてくれ、という気分で遠くの空を眺めて小さくため息をつく。
夕焼けに染まる空はいつもはない哀愁を漂わせていた。
夕日に染まる空気の中で、ジェイドだけはその白さを保っている。
長い髪の間からのぞくうなじは白く、襟ぐりから茶色の革ひもがみえた。
色素が薄いにしても、やっぱりこれは白すぎないか、と赤みの少ない髪をすくって耳にかけてやる。
白い頬がさらされて、わずかに朱がさした。
「……ラドクリフ?」
「ジェイド、おまえ体調悪くないか」
ジェイドの頬が僅かにこわばったのを見逃さなかったリオは、その額に手を当てた。
熱はないようだが、むしろひくい。
人前で弱ってるところなんか見せるようなキャラじゃないよな、とわずかに潤んだその瞳を見つめる。
今更だが、周りの視線が超痛い。誰か助けて。
皆の気持ちはよく分かるのだ。大方、ジェイドが体調悪くする事なんかない、っていうのと、この俺の前限定と思われるしおらしい態度。
でもたのむからそんなに見つめないで欲しい。
「宿まで頑張れる?」
「平気です、気にしないでください」
「……きつくなったら言えよ」
体調悪い割になんで微妙に嬉しそうなの~? 思わず顔しかめちゃったよ、とやるせない気持ちを空元気でごまかしてみるもごまかしきれない。
なんだこの破壊力。
そろそろ、俺の前でも通常のジェイド・カーティスでいてください。
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